スマートシティの実現には、MaaS(Mobility as a Service)による効率的な移動手段の提供が不可欠です。そしてそのMaaSを支える上で、地図APIが重要な役割を担います。本記事では、地図APIがどのように都市交通データの統合を促進し、MaaS対応を可能にするのか、その具体的な役割と導入のポイントを解説します。
スマートシティとは、ICTやIoTなどの先端技術を活用して都市機能の高度化を図る都市モデルのことです。エネルギー、医療、交通、防災などの分野で、データを活用して効率的かつ持続可能な運営を目指す仕組みとして注目されています。中でも交通分野における課題解決は、住民の移動効率や都市の経済活動に直結するため、特に優先度が高くなっています。スマートシティの実現に向けて、地図APIを活用したMaaSの導入は欠かせない技術要素です。
MaaSとは、複数の移動手段をひとつのプラットフォームで統合し、最適な選択肢を提供する考え方です。電車やバス、タクシー、シェアサイクルなどをアプリ上でシームレスに連携させることで、ユーザーは効率的な移動が可能となります。この統合を視覚的に支えるのが地図APIであり、直感的に理解しやすい移動案内の実現に寄与します。さらに、移動手段の組み合わせや時間帯に応じた情報もAPIを通じて柔軟に提供できるため、MaaSの運用を支える重要な要素といえるでしょう。
スマートシティの交通インフラでは、さまざまなデータがリアルタイムに生成されています。それらを有機的に結び付けるには、柔軟性と拡張性に優れた地図APIの活用が有効です。APIを通じて、交通機関の位置情報や運行状況を連携させることで、単なる情報の寄せ集めではなく、意味のある「移動の全体像」が見えるようになります。例えば、鉄道の遅延とバスの運行情報を結びつけて表示するなど、ユーザーの利便性を高める連携が可能となるのです。
地図APIを活用することで、渋滞や事故、公共交通の運行遅延といった交通情報をリアルタイムに把握することが可能です。その結果、都市住民や観光客はより適切なルートを選びやすくなり、都市全体の交通流動性向上につながります。さらに、行政や交通事業者はこうしたデータを分析し、混雑緩和の施策や交通計画の改善に役立てることもできます。リアルタイム性を確保しつつ、直感的に情報を提供できる点が、地図APIの大きな強みといえるでしょう。
地図APIは、異なる交通事業者が提供するデータを統合し、利用者に一つの画面で提示できるようにします。バスの時刻表、鉄道の運行情報、シェアモビリティの空き状況といった情報を視覚的に表示することで、ユーザーは最短ルートやコストを迅速に把握することが可能です。このような統合は、サービス提供側のシステム連携だけでなく、ユーザーインターフェースの設計にも影響を与えるため、APIの柔軟性と対応力が非常に重要になります。
地図APIを導入する際には、自治体や国が提供するオープンデータとどの程度連携できるかの確認が必要です。特に、交通や観光、災害情報など、公共性の高いデータとの連携は、市民サービスの向上に直結します。連携が可能であれば、情報更新の自動化や他システムとの統合も容易になり、運用コストの削減にもつながります。導入効果を最大限に引き出すためには、データ活用における柔軟性の確保が重要です。
地図APIを活用したシステムは、今後のサービス拡充や技術革新に対応できる拡張性が求められます。たとえば、新たな交通手段の追加やIoTセンサーとの連携などにも柔軟に対応できる設計が理想的です。一方で、個人の移動履歴や位置情報を扱うため、セキュリティ対策も怠れません。通信の暗号化やアクセス制限の設計をあらかじめ組み込んでおくことで、安心・安全なサービス提供が可能になります。
今後は、地図APIに蓄積された交通データをAIと組み合わせることで、需要予測や交通制御が可能になります。たとえば、天候や曜日、イベント情報をもとに混雑を事前に予測し、交通信号の制御や公共交通機関の増便を自動で最適化するといった施策が実現可能です。こうした予測型の制御は、従来の事後対応から一歩進んだ都市運営を支える技術基盤となります。
地図APIの活用は交通領域にとどまりません。避難所の位置情報、医療機関の混雑状況、福祉施設の空き状況といった情報を住民に提供することで、生活の質向上にも寄与します。APIを介して各分野のデータを統合し、利便性の高いサービスとして展開することで、スマートシティの価値をさらに高めることができるでしょう。
一口に有料の地図APIといっても、サービスによって特徴や強みは異なります。また、適している用途も変わりますので、自社のニーズに見合ったサービスを導入しましょう。以下では、おすすめの有料地図APIサービスをご紹介します。
道路情報が必要な
事業・システム開発なら
MapFan APIでは、全国の道路をくまなく実装調査したデータを使用。
「車種別規制」「マップマッチング」「未来情報周辺検索」など、物流と相性の良い機能が充実したサービスです。
住宅地図を利用した
事業・システム開発なら
ZENRIN Maps APIは、古くから住宅地図事業に注力するゼンリンが提供。
建物に独自IDを付与し時系列で管理することが可能で、住宅関連の機能が充実したサービスです。
公共交通機関を使った
事業・システム開発なら
NAVITIME APIでは 、交通ルート検索や場所検索、乗換案内などの機能を提供。
徒歩や電車、バス、飛行機といった交通機関に関する機能が充実したサービスです。
【選定条件】
Googleで「地図 API」と検索し(2024年3月11日調査時点)、検索結果全ぺージに表示された会社の公式HP18社を調査。そのうち、以下の条件で有料版サービスを扱う3社を選定しています。
・MapFan API...調査した18社のうち唯一、地理空間データとツールを活用して問題を解決するリスト「世界の地理空間企業トップ100社」に選定(Global Top 100 GeospatialCompanies 2024)された企業。
・ZENRIN Maps API...調査した18社のうち、創業が1948年と最も古く、専門スタッフの現地調査により、住宅地図を更新し続ける企業
・NAVITIME API...調査した18社のうち、交通機関・ルート検索機能が最も多い企業